 |
欧米人が香水を多用するのは風呂に入らないのをごまかすためというのは誤解 |
鈴木隆氏は調香師(パフューマー)で,香水等の芳香を調合する専門家です。しかし,「元来がひねくれものの私は,悪臭の誘惑に勝てなかった(P. 5)」という理由で悪臭の正体解明に取り組んでいるそうです。大学時代の専攻はフランス文学ですが,入社した香料会社での社員教育の成果か,化学に基礎を置いた本になっています。ただし,悪臭は社会的にタブーとされてきたためか,化学の専門論文に加えて,官能小説(それもマニア向け)も本書には頻繁に引用されています。怖いもの見たさで本書を手に取りましたが,参考になるヶ所もあります。例を挙げましょう。
・「第1章 おなら…正しい屁理屈のススメP(. 10)」…おならの成分や回数,それらと生活習慣との関連は,研究が難しい領域にもかかわらず様々な業績があることを教えられました。
・「第4章 膣と精子…愛という名の悪臭(P. 144)」…「膣臭の改善」商品の開発に取り組む研究所員の奮闘に関する記述が参考になりました。担当所員は男性なのですが,実験用のモデル膣臭(実験を簡易化するために生の匂いをサンプルとして調香師が香料を組み合わせて再現する)のサンプル集めや女性アシスタントへのセクハラにならないための涙ぐましい努力が偲ばれます。
・「第6章 死体…人間最後の悪臭(P. 223)」…人は生きているから「人」たりえるのだと認識を新たにしました。死体の時間経過とその悪臭について本章では述べられていますが,おならやゲップ,ワキガ,精液臭,糞尿といった本書で扱っている全ての悪臭の集大成が死体臭という印象を持ちます。匂いの観点からの指摘,「人は死ねばウンコになる」は名言です。
読者の評価はまちまちでしょうが,個人的には調香師志望の方,口臭やワキガにお悩みの方,欧米人が香水を多用するのは風呂に入らないのをごまかすためと誤解されている方には一読をお勧めします。
 |
悪臭と香水も紙一重?ユーモラスな臭い学問 |
書籍名からすると、臭いフェッチ関係の本かと思いきや、様々な臭いに関する専門的かつユーモラスな考察集である。香しい臭いを追求する香料の会社の研究員の著者が解説する臭いに関する話題は、広く深く造詣に富んでおり、専門用語の多い本書もその平易な文体により、赤川次郎の小説のように読みやすい。古来、天才と狂気は紙一重と言われるが、本書を読むと悪臭と香水も紙一重であることがよくわかる。